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また、中国北部では、過剰な汲み上げによって地下水が30mも低下した、と言われておりますし、世界の穀倉地帯である、アメリカの中部平原、インド・パキスタンのパンジャブ地方でも地下水位が低下し、農業生産に深刻な影響を与えております。さらにパンジャブ平原では、地下水に塩分が混入することで、農業生産に打撃を与えております。これらはすべて、需要の増大に伴う淡水の過剰使用が原因とされております。
この淡水資源を涵養し、確保するためには、森林資源の保全が必要ですが、この森林資源も増え続ける人口の圧力と、工業化の進展によって危機に瀕しております。
「水」の問題はこのように大きな意味で、私たち人類の未来を制約しているのであります。
この水の問題は、地球環境や食料との関係で重要な影響を私たち人類に与えるだけでなく人口問題の解決そのものに、直接大きな影響を与えております。
1994年にカイロで開かれた「国際人口開発会議」での一つの大きな合意は、人口問題を解決に導く上で、まさに「リプロダクティブ・ヘルスを実現できる環境を作りあげることこそが重要である」ということであります。
この、リプロダクティブ・ヘルスを実現する環境には物理的な意味と社会的な意味がありますが、物理的な意味では、まさしく水の問題が大きな意味を持っております。リプロダクティブ・ヘルスを実現する上で、最も重要な条件となるのは「きれい」で「衛生的」な水を手に入れることです。この「きれい」で「衛生的」な水の確保は、乳児死亡率の低下を図る上で不可欠なものだからです。
地球に負荷をかけ、自らの未来を圧迫している人口問題を解決する上でも、また人口増加によって生じる環境等への圧力に対応するためにも「水」の問題は避けては通れない問題であります。
この、重要な「水」の問題はこれまであまり総合的な視点から扱われてきませんでした。国際会議、特に国会議員会議で「人口・水資源・開発」を総合的に議論するのはこの神戸会議が嚆矢であります。
人間の行為を省み、希望のある未来を創り出すために「人口・水資源・開発」を総合的に議論することは必要不可欠なことであり、この画期的な会議を、ここ神戸で開催することの意義は大変大きいと申せましょう。各位の活発なご議論と実りある成果を切に期待いたしております。
今回、急遽、韓国訪問のため甚だ残念ながら欠席せざるを得なくなったことをお詫び申し上げ、ご挨拶とさせていただきます。ご静聴ありがとうございました。

 

 

 

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